ウクライナ侵攻を開始以来、数回に渡りロシア国債の格付けが引き下げられています。
今回は格付けについて、そしてデフォルトの可能性が高まってきたロシアの現状についてまとめたいと思います。
格付けとアウトルック
格付けとは
投資家は、債券のデフォルト(債務不履行)リスクを判断する基準がなければ、安心して投資を行えません。
そこで、格付け会社が債券に関する情報を、格付け記号を用いて提供しています。
債券発行者(債務者)が債券保有者(債権者)に、債券の元本の返済や利子が支払えない状態。
デフォルトしても、償還期限をのばして返済する必要がある。
デフォルト認定は、格付け会社によって行われる。
デフォルト経験がある国としては、アルゼンチン、ギリシャ、エクアドル、ブラジルなど。
格付け会社
格付け会社として、アメリカの「S&Pグローバル」、「ムーディーズ・インベスターズ・サービス」、米英の「フィッチ・レーティングス」などが有名です。
日本には「格付投資情報センター(R&I)」、「日本格付け研究所(JCR)」があります。
S&Pは、株式指数のS&P500を発表している機関だね。
格付け記号
「S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)グローバル」と「ムーディーズ」の格付けについてまとめたのが下記表です。
信用リスク | ムーディーズ | S&Pグローバル | |
---|---|---|---|
投資適格水準 | 最小限 | Aaa | AAA |
極めて低い | Aa1 | AA+ | |
Aa2 | AA | ||
Aa3 | AA- | ||
低い | A1 | A+ | |
A2 | A | ||
A3 | A- | ||
中程度 | Baa1 | BBB+ | |
Baa2 | BBB | ||
Baa3 | BBB- | ||
投機的水準 (ジャンク債) |
相当 | Ba1 | BB+ |
Ba2 | BB | ||
Ba3 | BB- | ||
高い | B1 | B+ | |
B2 | B | ||
B3 | B- | ||
極めて高い | Caa1 | CCC+ | |
Caa2 | CCC | ||
Caa3 | CCC- | ||
Ca | CC | ||
債務不履行の懸念 | C | C | |
債務不履行 | D |
「投資適格水準」は、投資に適しており、金利は低いですが、安全性は高い状態です。
「投機的水準」は、金利は高いですが、投資リスクが高い状態です。
投機的水準の債券は、ジャンク債やハイ・イールド債と呼ばれます。
ジャンク、つまりがらくた債とは手厳しいね!
見通し(アウトルック)
アウトルックとは、国債や社債などの格付けの方向性についての見通しを示したものです。
アウトルックは以下のようになっています。
ポジティブ | 格付けが上方に向かう可能性 |
---|---|
ネガティブ | 格付けが下方に向かう可能性 |
安定的 | 格付けが安定的に推移する可能性 |
方向性不確定 | 格付けが上方にも下方にも動く可能性 |
ロシアの国債の格付け
ロシア国債の格下げへの流れを見ていきます。
2022年2月24日にロシアがウクライナへの侵攻を開始してからの格付けの変化です。
S&Pグローバル
2/25
外貨建ての長期債務格付けを「BBBマイナス」から投機的水準にあたる「BBプラス」へ1段階引き下げ
3/3
外貨建ての長期債務格付けを「BBプラス」から信用リスクが極めて高いとされる「CCCマイナス」まで8段階引き下げ
3/17
外貨建てと自国通貨建ての長期債務の格付けを、デフォルト(債務不履行)の起こる可能性が高い「CC」まで引き下げ
ムーディーズ
3/3
長期信用格付けを投資適格の水準の「Baa3」から投機的水準にあたる「B3」に6段階引き下げ
3/6
外貨建てと自国通貨建ての長期債務格付けを、非常に投機的であることを示す「Ca」に再格下げ
見通しは「ネガティブ」
デフォルトの手前まできてるのね
EUの制裁
3/15
主要格付け機関にロシアの政府と企業を格付けすることを禁止すると発表
アメリカの制裁(4/8更新)
4/4
ロシア当局が米金融機関に保有する外貨準備から6億ドル余りの資金を国債の元利払いに使うことを阻止
- ロシアにデフォルトするか、残りのドル準備を取り崩すかを迫る
- ロシアの財源を枯渇させるのが目的
ロシア デフォルトへのカウントダウン(4/8更新)
ウクライナ侵攻開始後の利払い
ウクライナ侵攻開始後の利払い日と償還日は下記のようになっています。
(ブルームバーグより、ステータースは更新)
利払い日 | 償還日 | 金額 (100万ドル相当) |
ルーブル・フォールバック条項 | ステータス |
---|---|---|---|---|
2022年3月16日 | 2023年9月16日 | 73.1 | 無し | 支払い済 |
2022年3月16日 | 2043年9月16日 | 44.1 | 無し | 支払い済 |
2022年3月21日 | 2029年3月21日 | 65.6 | 有り | 支払い済 |
2022年3月28日 | 2035年3月28日 | 102 | 有り | 支払い済 |
2022年3月31日 | 2030年3月31日 | 87.5 | 無し | 支払い済 |
2022年4月4日 | 2022年4月4日 | 2000 | 無し | ルーブルで支払い(4/8現在) |
ルーブルでの支払いは可能か?
プーチン大統領は「非友好国」向けの債務を、ルーブルで返すことを一時的に認める大統領令に署名しています。
当然ですが、欧米各国はこれに応じない見込みです。
自国通貨ルーブルでの支払いを認めるルーブル・フォールバック条項があっても、債権者が納得しなければルーブルで支払われてもデフォルト認定される可能性があります。
デフォルト認定は格付け会社が行います
アメリカが米金融機関の外貨準備を使った国債の元利払いを阻止(4/8追加)
4月4日、ロシア当局が米金融機関に保有する外貨準備から国債の元利払いに使うことを阻止しました。
ドルが使えない…となればルーブルで払うしかありません。
ということで、4日が支払期限のドル建て国債の償還と利払いはルーブルで支払われたようです。
ドルは持ってるのに使わせてくれないんだから仕方ないだろう!ということですね。(まぁそうですね…)
しかし当然ルーブルでの支払いは認められていません。
猶予期間は30日、この間にドルで支払わないとデフォルト(債務不履行)なる可能性があります。
絶対にデフォルトさせてやるという強い意志を感じる
米ドル/ロシアルーブルのチャート
ちなみに下記は米ドル/ロシアルーブルのチャートです↓
4/8現在急速に戻しています。凄いボラティリティですね。
ロシアがデフォルトしたらロシア経済はひっ迫するだろうけど、世界経済に与える影響が気になりますね