現在ドル円が進んでいます。
為替介入するかどうかも話題になっていますが、改めて為替介入とは何なのかをまとめてみました。
また実際のドル円チャートに、為替介入したタイミングを表示させ、為替レートへの影響も見てみました。
為替介入とは
為替介入は中央銀行が行う
通常、為替レートは自由な取引の中で決まります。
しかし急激な自国通貨高、自国通貨安が起こると、経済に悪影響を及ぼします。
そのような場合、財務省の指示により中央銀行である日本銀行が「為替介入(外国為替平衡操作)」を行います。
中央銀行とは、通貨を発行し通貨価値の安定を図るために金融政策を行う銀行です。
中央銀行は、日本は「日本銀行」、米国は「連邦準備制度理事会(FRB)」、ユーロ圏は「欧州中央銀行(ECB)」です。
決めるのは財務大臣、実効するのは日銀だね
急激な円高の場合
日銀が外国為替市場で円を売ってドルを買う「円売り、ドル買い介入」を行います。
政府短期証券を発行することによって円資金を調達し、これを売却してドルを買い入れます。
急激な円安の場合
日銀が外国為替市場でドルを売って円を買う「円買い、ドル売り介入」を行います。
財務省(外国為替資金特別会計)や日銀の保有するドル資金を売却して、円を買い入れることになります。
外貨準備という限りのある資産を売って円を買うことになるので、限度があります。
円で他国通貨を買う「円売り介入」の方がやりやすそうだね
為替介入の種類
単独介入
単独介入とは、急激な為替の変動を抑えるために、1国の中央銀行のみで為替介入を行うことです。
円売り介入ばかりだね
協調介入
単独介入で効果がみられないと、2か国以上の中央銀行が同じタイミングで介入する「協調介入」が行われます。
複数の国で行われるので、当然単独介入より効果があります。
最後に協調介入したのは10年以上前か
口先介入
実際に為替市場に資金を投入することなく、要人の発言だけで相場の流れを変えることを言います。
日銀の黒田総裁の「最近の円安はかなり急速」のような発言ですね。
こういった発言で市場に警戒感を与え、一時的に一方的な流れを止めることができます。
口先介入だけで済んだらラッキーだね
2008年3月の金融危機時がその例になるかな
ドル円レートと為替介入の歴史
上記は、ドル円の週足チャートです。
円買り・ドル売り→青色(協調介入は濃い青)
円売り・ドル買い→赤色(協調介入は濃い赤)
円高を阻止したい日本
こうしてみると、圧倒的に「円売り・ドル買い」の為替介入が多いことが分かります。
「円買い・ドル売り介入」は1995年以降、協調介入含め2回しかありませんでした。
円高を阻止したい理由としては、日本は貿易黒字国である(だった)ことが挙げられるます。
貿易黒字国である日本は、商品を輸出して受け取る代金を、円に換える需要が大きくなります。
外国通貨から円に両替するので、円の需要が増え、円高・ドル安要因になります。
やっきになって円高を阻止しようとするのは、輸出が多い日本では円高に傾きやすく、また円高の方が経済に悪い及ぼす影響が高いからだと思われます。
2021年は貿易赤字だったようだけど…
今でもこの理屈で通じるのかな?
明確に効果を感じるのは「協調介入」
単独介入の場合、明確に効果がある場合は少ないよう思います。
明らかに効果を感じるのは、やはり協調介入の場合です。
1995年の日米貿易摩擦時の「円売り・ドル買い」単独介入では、初動は逆(円高)方向に動いてしまっています。
粘り強い介入(なんと1995年は40回以上の為替介入)と、1995年7月の日米共同介入でやっと円高に歯止めがかかりました。
また、1998年のアジア通貨危機の「円買い・ドル売り」介入でも、4月に行われた単独介入直後は誘導したかったのと逆(円安)方向に動いてしまっています。
6月の日米共同介入によって一気に円高方向に動きました。
おおざっぱな週足チャートでの感想でしかありませんが、単独介入では効果が出るのに時間がかかる場合が多いように感じました。
やはり複数の国が同調すると強いね
為替介入の可能性
金融政策が一致してないと効果は一時的?
現在円安になっているのは必然です。
なぜなら世界が金融引き締めに向かう中、日本は「粘り強い金融緩和」を強い意志を持って続けているからです。
金融緩和は金利を抑制するものです。
金利の低い円から他国通貨に資金が流れるのは必然のことです。
それを力技の為替介入で止めようとしても、焼石に水だと思います。
ファンダメンタルズと一致してこそ、為替介入の効果が得られるのではないかと思います。
金融緩和は続けたいけど、円安は止めたいというのは難しいと思うの
協調介入は他国の理解が必要
現在上図の通り、アメリカは急速なインフレが進んでいます。
インフレを止めるために、通貨価値を上げる利上げをしています。
もしドル安になってしまえば、アメリカの輸入コストが上がり、更なるインフレを招く恐れがあります。
そんな状態をアメリカが果たして許すのでしょうか?
アメリカからすれば、日本はたいしてインフレしてないのだから、それくらいの円安我慢しろ、といいたくなるでしょう。
まとめと感想
黒田総裁の発言から、あまり円安を問題にしていると感じられません。
そもそも2%のインフレを目指しているはずです。
急速な円安には懸念しているでしょうが、為替介入が必要と考えているかは微妙です。
鈴木経済相が「悪い円安」の旨を発言するようになりましたが、それは口先だけだと思います。
「円安」がインフレを加速させる悪だとする報道や国民の声が大きくなっているので、一応懸念しているポーズをしているだけなのかな?と感じています。
急激な為替レートの変動が望ましくないと思っているのは確かだとは思いますが。
円高と円安のどちらがいい、悪いというのは少し違うかなと思っています。
円高も円安も立場によって、いいとも悪いとも言えるからです。
輸出企業に勤めていれば円安がいいでしょうし、輸入企業に勤めていれば円高が好ましいです。
そのどちらでもない国民(消費者)にとっては、円高がいいと感じるでしょう。
何にしろ、どちらに傾いても大丈夫なように、資産の分散だけはしておきたいものです。
政府は目先の選挙のことしか考えてないですから