2022年12月20日の金融政策決定会合が開催され、長期金利の変動幅の拡大というサプライズがありました。
今回は金融政策決定会合で変わったこと、日本の国債利回り推移、日米金利差をチャートを使って確認していきたいと思います。
イールドカーブ・コントロール(YCC)
イールドカーブについてはこちらをご覧ください。
順イールド、逆イールド、フラットイールドについて簡単に説明しています。
日本のイールドカーブ・コントロールとは
日本は2016年9月から、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入しています。
2つの要素から成り立っており、1つに「イールドカーブ・コントロール」があります。
政策金利(短期金利)はマイナス0.1%、長期金利の目標は0%程度を目標に、長期国債の買い入れを行うため、上記の図のようなイールドカーブになります。
長期金利の変動幅の上限は「0.5%程度」としています。(2022年12月20日現在)
短期金利(政策金利)に加えて長期金利を操作することで、長短金利差を一定の範囲にとどめるのが狙いです。
まとめると以下のようになります。
短期金利:日銀当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用
長期金利:10年物国債金利は0%で推移するように上限を設けず長期国債の買い入れを行う(変動幅の上限は±0.5%)
いびつな日本のイールドカーブ
上記は2022年12月20日の金融政策決定会合前の国債のイールドカーブです。
(日銀のホームページより流用)
10年国債利回りは0.25%で抑えらえれているので、10年の年限で凹んでいることが分かります。
抑え込まれている10年物の蓋を(拡大して)外してやることできれいなイールドカーブにしたいというのが今回の変動幅の拡大の目的です。
指し値オペ
長期金利の上昇を止める方法として、利回りを指定して国債を買い入れる「指し値オペ(公開市場操作)」を導入しています。
今回、国債買い入れ額が、従来の月間7.3兆円から9兆円程度に増額されました。
10年物の指値オペを「0.5%」で毎営業日実施し、各年限で更なる買入れ増額や指値オペを機動的に実施することになりました。
長期金利の変動許容幅
長期金利の変動許容幅は、2016年9月年にイールドカーブ・コントロールが導入されてから下記のように複数回拡大されています。
変動許容幅 | |
---|---|
2016年9月 | ±0.1% |
2018年7月 | ±0.2% |
2021年3月 | ±0.25% |
2022年12月 | ±0.5% |
2022年12月20日の金融政策決定会合では、±0.25%から±0.5%に拡大されました。
短期金利と長期金利の推移
短期金利と長期金利の推移を、長期金利の変動許容幅とともにまとめたのが上記のチャートです。
長期金利の変動許容幅は背景に薄い青色を付けました。
今回の会合で変動許容幅が0.5%に拡大したことで、10年債利回りは一時0.479%に達しました。
日本の消費者物価指数(CPI)
日銀は、消費者物価指数(コア)の上昇率が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するとしています。
12月のCPIコア指数は3.70%と、目標の2%を大きく超えています。
しかしこの数値は、来年半ばにはプラス幅を縮小していくと日銀は見ているようです。
今後のドル円の見通し
上記は米国10年債利回りから日本10年債利回りを引いたチャート(灰色)と、ドル円チャート(赤色)を表示させたものです。
(チャートはTradingviewより、2022年12月25日時点)
今回の修正で、ドル円は7円程度も暴落しました。
しかし日米金利差を見ると、現在はやや売られすぎかなと個人的には思います。
まとめ|他国と比較して遅すぎ、景気を見るなら早すぎ
今回の修正について、円安是正したいならもっと早くすればよかったのに、というのが感想です。
米国ではCPIのピークアウトが見えてきて、利上げの着地点が議論されるところまで先に進んでいるのに、日本は遅すぎます。
もっと早くやっておけばここまで円安進行しなかったのでは?
ここまできたら、日本の賃金上昇が見られて景気が改善してくる時期まで遅らせた方が良かったのではと思います。
要するに中途半端な時期かなと。
黒田さんの任期が終わる来年4月までにやっておきたかったのかもしれませんが。
そんなの日本の景気には関係のないことです。
もうちょっと市場とうまくコミュニケーションとって、株も為替もボラティリティを上げないように努力してほしいものです。
そんなサプライズはいらない・・・
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