2022年10月21日、やっと2度目の為替介入が行われました。
今回の為替介入の1時間半前にはさまざまな市場に変化がありました。
今年の為替介入から得られたデータを整理して、為替介入時のデイトレードについても考えてみます。
※チャートはすべてTradingViewを利用して作成しています。
10月21日の為替介入のまでの流れ
2022年10月21日為替介入に至るまでの口先介入まとめ
口先介入の警戒レベルは下記記事をご覧ください。
まずは、2022年9月22日の為替介入以降から、2022年10月21までの口先介入をまとめます。
日付 | ドル円 | コメント | レベル |
---|---|---|---|
9月26日 | 144.78 | 鈴木財務相「今後も必要に応じて対応をとる。その考えに変更はない」 | 4 |
10月11日 | 145.89 | 神田財務官「飛行機の中からでも介入決定出来る」、「為替の水準ではなくわれわれが注視しているのは急激な変動でありいつでも必要な措置を取る用意はしている」 | 4 |
鈴木財務相「強い緊張感を持って注視している」「万が一、今後過度な変動があれば適切な対応を取ることに変わりはない」 | 4 | ||
10月12日 | 146.97 | 鈴木財務相「投機筋が動いて急激な変動があれば断固たる対応をする」、「どこかの水準を超えたというのではなくて、ボラティリティーに注目している」 | 5 |
10月14日 | 148.85 | 神田財務官「断固たる行動を取る用意」、「警戒が高まり、また必要な措置を取らなければいけない可能性が高まっている」、「過度な変動、特に投機を背景にしたものには適切な措置を取っていく」 | 5 |
10月15日 | - | 神田財務官:足元で進む円安について「やや激しい動きだと考えている人が多いと思う」 | 3 |
10月17日 | 149.08 | 鈴木財務相:為替市場での覆面介入、鈴木財務相「コメントしない」 | - |
神田財務官:為替の過度な変動に対しては「しっかりと対応していくことになる」、「国際合意のもとで各国と適切に対応していくことになる」 | 4-5 | ||
10月18日 | 149.38 | 岸田首相「投機の絡んだ急速な動きは問題」、「国際社会との連携が重要」 | 4-5 |
10月19日 | 149.90 | 日銀の黒田総裁「急速な円安進行は日本経済にとってマイナスであり、望ましくない」、「為替は経済、金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移するのが極めて重要」、最近の円安は急速かつ一方的で先行きの不確実性を高めるため「日本経済にとってマイナスである。望ましくない」 | 3 |
日銀の安達誠司審議委員:円安について「スピード感が非常に強い、企業の設備投資などに不透明感をもたらす可能性がある」警戒感を示した。 | 3 | ||
鈴木財務相:「きめ細かく頻度を上げて常に動きをチェックしている」 | 3 | ||
10月20日 | 150.28 | 神田財務官:「今まで以上に過度な変動が許される状況ではなくなっている中で、我々は必要な行動をとれる態勢は常にできている」、「なお過度な変動がある場合には、これまで以上にしっかりと対応していかなければならない」、「介入をしているか、していないかにはコメントしない」、介入の原資は「無限にある」 | 3-5 |
鈴木財務相:為替水準については「コメントしない」、「投機による過度な、そして急激な変化というものは容認できない」、「断固たる対応を取るという、そういう従来の考えについては変更ない」、「これからも細かく、緊張感を持って動向をしっかりと見ていく」 | 5 | ||
10月21日 | 151.94 | 鈴木財務相「投機による過度な変動は容認できない」、「高い緊張感をもって動向を注視するとともに過度な変動には適切な対応とる考えに変わりない」 | 4 |
円買い・ドル売り為替介入 (5兆6202億円) | 実行 | ||
10月24日 | 149.71 | 円買い・ドル売り為替介入 (7296億円) | 実行 |
10月11日から21日まで、毎日のように口先介入が行われました。
大体言っていることは同じで、投機による過度な変動(急激な変化)をけん制するコメントがほとんどです。
日銀が臨時国債買い入れオペ通知
日本銀行は20日午前10時10分の金融調節で、事前に予定されていない臨時の国債買い入れオペを通知した。臨時オペの実施は9月27日以来。10年国債を利回り0.25%で無制限に買い入れる指し値オペも継続通知した。
日本国債が売られ、長期金利が19日から2日連続で一時、0.255%に上昇していました。
これを受けて20日に、日銀は臨時の国債の買い入れオペを行うと発表し、金利の上昇を抑え込む姿勢を鮮明にしました。
これでドル円は過度に変動するな!と言われても困りますね。
ファンダメンタルズに沿った動きです。
絶対に金利上昇を許さない姿勢です
為替介入前の21時52分の急落は何だったのか|FOMCが利上げピークと減速時期を討議
ドル円は13日連続陽線のジリ上げの中、一体いつになったら為替介入を実施するのかとヤキモキしていました。
そして21時52分にドル円が急落する場面がありました。
為替介入の1時間半前のことです。
ドル円は151.874円から151.057円まで0.8円下落しました。
しかし急変があったのは、ドル円だけではありません。
以下のチャートは、米国債2年物利回り、ドルインデックス、ダウ先物を表示させた1分足チャートです。
21時52分を境に、それまで堅調だった米国債2年物利回りとドルインデックスは一転急落し、ダウ先物は急騰しています。
さて、21時52分に何があったか調べてみると、ウォールストリートジャーナルの以下の記事です。
Fed Set to Raise Rates by 0.75 Point and Debate Size of Future Hikes
ニック・ティミロスさんの「FRBは金利を0.75ポイント引き上げ、将来の利上げの規模について議論する予定」という記事です。
有料なので見れませんが、後で上がったロイターの記事でその内容がわかります。
米連邦準備理事会(FRB)は11月1━2日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75%ポイントの追加利上げを実施し、12月会合で利上げペースを緩める可能性性を巡りどのようにシグナルを発するべきかを討議する公算が大きいと、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が21日報じた。
12月の利上げペースを緩める可能性を示唆する記事で、ドル安、米国債2年物利回り、株高を招きました。
またドルと米国債利回りが下げたことで、ゴールドが上昇しました。
金融引き締めのピークがすぐそこに迫っていると意識されています。
利上げが落ち着いてくるということは、ドル高も落ち着くか?
今年の為替介入の値動きのまとめ
ここからは1分足チャートで、介入直後の値動きを見てみます。
ドル円のデイトレ、デイスキャルをされている方の戦略のヒントになれば幸いです。
9月22日の為替介入の値動き
為替介入が行われる前時点で、9月22日の1日の値幅は1.82円でした。
始値は144.08円、高値は145.9円でした。
下落開始 | 下落終了 | 下落時間 | 値幅 | 下落率 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
時間 | 水準 | フィボナッチ | 時間 | 水準 | ||||
下落1 | 17:03 | 145.814 | - | 17:21 | 142.463 | 18分 | 3.366 | 2.31% |
下落2 | 18:57 | 143.368 | 0.236(7分) | 19:28 | 143.409 | 16分 | 2.763 | 1.93% |
1回目の下落は17:03から17:21の18分間で、値幅は3.366円の下落(下落率2.31%)でした。
2回目の下落は7分間の調整をした後です。
フィボナッチでは0.382にわずかに届かず、0.236戻しをした後の下落です。
18:57から19:28の16分間で、値幅は2.753円の下落(下落率1.93%)でした。
10月21日の為替介入の値動き
為替介入が行われる前時点で、10月21日の1日の値幅は1.816円でした。
始値は150.128円、高値は151.944円でした。
下落開始 | 下落終了 | 下落時間 | 値幅 | 下落率 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
時間 | 水準 | フィボナッチ | 時間 | 水準 | ||||
下落1 | 23:26 | 151.64 | - | 23:54 | 149.029 | 17分 | 2.689 | 1.77% |
下落2 | 0:07 | 149.999 | 0.38(13分) | 0:26 | 147.157 | 19分 | 2.842 | 1.89% |
下落3 | 0:43 | 148.297 | 0.38(17分) | 1:00 | 146.184 | 17分 | 2.113 | 1.42% |
1回目の下落は23:26から23:54の17分間で、値幅は2.689円の下落(下落率1.77%)でした。
2回目の下落は13分間の調整をした後です。
フィボナッチでは0.5にわずかに届かず、0.382戻しをした後の下落です。
0:07から0:26の19分間で、値幅は2.842円の下落(下落率1.89%)でした。
3回目の下落は17分間の調整をした後です。
フィボナッチでは0.382戻しをした後の下落です。
00:43から1:00の17分間で、値幅は2.113円の下落(下落率1.42%)でした。
為替介入中のトレード方法を考える
上記の結果から、サンプルは5回と少ないですが、分足でトレードする場合の役に立ちそうなデータをまとめました。
- 5回の下落すべて下落継続時間は16分~19分。平均は17.4分
- 次の下落までの調整は7分、13分、17分
直前の下落継続時間より短い調整で終わった - 2回目以降の下落は、1回目の下落のフィボナッチ0.236~0.38戻しで開始する
0.5近くまで戻すことはあったが、抜けることはなかった - 下落の値幅は2.1円から3.3円。平均は2.74円。
- 下落率は1.42%から2.31%。平均は1.86%
下落時間がほぼ17分だったのは面白いですね。
所持し続ける時間の目安になりそうです。
実際怖くてかなり浅めにストップかけてしましそうですが(笑)
仕事をしているのでリアルタイムに為替介入でトレードできることは稀だと思いますが、次回は念頭に置いておこうと思います。
9月と10月の為替介入の共通点と分かったこと
値幅が1.82円を超えると為替介入
こうしてみると、9月も10月も、介入前の値幅は偶然かもしれませんが1.82円でした。
1日の値幅が2円を超えるのは阻止したいというとこでしょうか?
1日で2円程度の値幅が急速な為替変動と言えるのかもしれません。
為替介入により、1日の値幅は9月は5.555円、10月は5.779円になりました。
為替介入前の高値は90銭台
9月22日の高値は145.9円、10月21日の高値は151.944円でした。
どちらも146円、152円台に乗せる目前に為替介入が行われました。
為替介入の時間帯|東京時間外でも為替介入は可能
今年の為替介入は、東京時間以外で行われました。
9月22日の為替介入は欧州時間の17:00、10月21日の為替介入に至ってはニューヨーク時間の23:26でした。
23時台はロンドンフィックスで、最も出来高の多い時間帯です。
まさか、欧州時間とニューヨーク時間と重なるこのタイミングで為替介入をしてきたのは大きな驚きでした。
まとめ|タイミングが良かった
今回の為替介入はわりと効果的かもしれません。
ローソク足の実体も、9月は1.753円、10月は2.479円と、今回のほうが前回より反発が大きくありません。
ウォールストリートジャーナルの記事で大幅利上げが終了観測が高まった後の介入で、効果的に働いているように思います。
短期的ですが、ファンダメンタルズの方向の介入だったからです。
もちろん根本は解決していませんが、少しトレンドが変化する可能性はあると思います。
大幅利上げが終了するまでの時間稼ぎとしては、良かったんじゃないでしょうか?
来週月曜からどういう動きをしてくるか非常に興味深いです。
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